古民家再生プロジェクト(その1)

 日ごろから大変お世話になっている鈴木商店さんが徳島の美波町にある古民家をリノベーションし、サテライトオフィスとして進出する話があると聞いた。とても興味深いプロジェクトなので、何らかの形で参加できたらいいなあと思っていたところ、早速鈴木社長から是非デザインをお願いしますとお話をいただき大変嬉しく思った。

 7月1日にメールで現況写真が届いた。まず最初に瓦土塀の重厚で落ち着いた佇まいの建物外観に一目惚れ。後に聞けば古民家はかつて朝鮮との交易などで栄えた元商家の屋敷で、明治初期に建てられ築150年ほどだという。内部空間も土間や囲炉裏のある和室などとてもいい雰囲気で、造作や調度品全てに趣があり「出来るだけそのまま生かしたい」というのが素直な第一印象であった。

 鈴木社長からは、民芸調飲食店風にはしたくない、かっこよくして欲しいと(正確には「かっちょよく」と言っていたと思う。この辺のニュアンス、「格好良く」と「かっちょよく」では少し違う。東京的な洗練に対し、もう少し大阪的、いちびった雰囲気も必要だろうと思った)、さらに具体的な要望としては玄関から南の庭へ通じる土間の抜け感をより強調して、今少し暗く感じる内装を全体的に明るい雰囲気にしたい、あとは全てお任せします、という事だった。

 7月4日に初めて現地を訪れた。受けた印象と言えば、やはり写真を見た時と同じで「このままでええやん」。趣のある古民家に最新のパソコンやモニターがずらっと並んでいて、今までいなかった若い人達がそこで働いている、というだけでもう十分絵になる。この時点ですでに合格点はクリアしているようだが、ここからが設計者としての試されどころ。デザイン的には何かもうひとひねり、新しい何かが欲しい。旧いものの中に新しい要素を放り込んで、どう展開、化学反応を起こし活性化させるか。テーマは地方の古民家を都会のシステム会社の若者が活用するということで、(あまりにもストレートすぎるけど)「新旧の対比による面白さ」といったところだろう。自分自身が四国出身で、今回の計画を田舎目線でも見ることが出来たため、大阪から見た美波町の古民家のあり方、美波町から見た都会のシステム会社の受け入れ方の両面から考えることができたと思う。