古民家再生プロジェクト(その3) -後半戦-

―後半戦―

 サロンの碧い壁は波をイメージさせるのにぴったりのモザイクタイルが見つかった。当初はこの壁にサーフボードでも飾ろうかと(勝手に)思っていたのであるが、自身もサーファーである鈴木社長から、ここ(美波町)ではサーフィンはファッションではなくカルチャーであり、ディスプレイとして使うのには抵抗がある、と言われてあえなく断念。まあ波型のタイルだけでも十分に絵になるのだが、サーフボードを却下されたからには何かもうひとひねり欲しい。装飾ではなく機能。サロンはミーティングスペースでもあることから、何が必要かと考えたところ、ここでドンデン返しの思いつき。波の壁がくるっと回ってホワイトボードに早変わり、この辺を前述のかっちょよさと見てもらえるかどうか。

 最後まで悩んだのがサロンと囲炉裏の間を仕切る建具。今回のプロジェクト全体のデザインコンセプトは「新旧の対比」。碧い海はどちらかというと過去、白い大理石調タイルとそこに置かれるモダンな家具は現在をイメージさせる。となればあとは未来を感じさせる何かが欲しい。そして単に現在・過去・未来が横に並んでいるだけでなく、つながっている感じ、それが密接に絡み合い循環しながらスパイラルアップするイメージ。そのために必要なもの、それは何か時代間の「のぞき穴」のようなものか。現在から未来を探る、過去を通じて未来を知る、あるいはその逆も。とにかく現在・過去・未来を瞬間的につなげる何か細工が必要。と散々悩んだ結果、建具に未来を期待させるイメージをパンチング加工(穴あけ)で表現し、それを通じて過去や現在がチラチラと垣間見られるような空間をつくろうと思いついた。その具体的な内容はどうするか?そこでまたまた鈴木社長に相談、何か面白いテーマないですか?で、1週間後に出てきた答えは「ソースコード」。建具にプログラムをパンチングして表現し、このプログラムの隙間から過去や現在を見せるという「シカケ」。建具自体はなんとか無事に出来たものの、私自身は現時点ではこのプログラムが何を意味しているか全く知らない。あとのお楽しみ。