古民家再生プロジェクト(その4) -ついに完成-

―ついに完成―

 懸案の土間空間は正面のガラスを出来るだけ大きくとって明るく開放的になった。キッチンはステンレスのシンプルなデザイン。トイレまわりへの入り口建具は美波町の山々を感じさせる緑色の黒板塗装(使い方としては日々の掃除当番を忘れないように書いておくようなイメージ)。照明は以前からの雰囲気を損なわないように、懐かしい裸電球(だけど中味はLED)。昔からあるツバメの巣に出来るだけ邪魔にならないように配慮して設置した。

 今回のサテライトオフィスの名称は、社内コンペの結果「美雲屋」と決定した。美波町の「美」と鈴木商店の中核事業であるクラウド=「雲」を掛け合わせたものだとの事。宿題であった囲炉裏の間の「ARフスマ」には、ちょうど同時期に美波町に進出する兵頭デザインさんによる「美雲屋」ロゴを貼りつけた。ロゴは雲(クラウド)と四国の輪郭をモチーフにした秀逸なデザインで、ここにIT端末をかざして観るとさらなる面白い「シカケ」が隠されている。

 玄関先に「美雲屋」の藍染のれんが付いて、ついにプロジェクトのハード部分は完成。のれんは今回のキーパーソンであるコンサルタントの小林陽子さんのフィールドワークである「のれんプロジェクト」の一環で、美波町の活性化のシンボルとして設置されている。陽子さんは本当に多才な方で、地元との調整から始まり、庭のしつらえや空間デザインのヒント、演出のためのディスプレイの提案・実施、あげくの果てには掃除片付け、さらには川遊びのガイドから宴会部長までプロジェクト全体において大変お世話になった。ただただ感謝。

―最後に―

 今後これから情報環境がより進化するにつれて、(少なくとも情報系の企業にとっては)距離という物理的な概念はどんどん薄れていくのだろう。東京と大阪、ニューヨークと美波町、どこにいるかはさほど大きな問題でなく、いかにいい発想をし続けるか、そのための環境、人間関係はどうあるべきか、というようなことが重要なテーマになってくるのだと思う。これをきっかけにこの先美波町がどう変わっていくか、鈴木商店がどう発展していくか、5年後、10年後が楽しみなプロジェクトである。鈴木社長はじめ、今回の計画に携わった皆さん、いい機会をありがとうございました。また是非お会いしましょう!